相続法の改正で何が変わる?遺産配分の不平不満が減るかも

相続法の改正で何が変わる?遺産配分の不平不満が減るかも

平成30年の第196回通常国会において、約40年ぶりに相続法の規定が改正されました。40年越しの改正でどのように変更されたのでしょうか?自分が当事者になった際に分からないことがないよう確認しておきましょう。

法律の改正部分

今回の改正でどのように変化したかを確認してみましょう。

配偶者居住権の新設

住居は資産です。そのため、遺産相続する際は住居の評価額も含めて遺産分配していました。しかしそれだと、分配する資産が足りない場合、住居を売却する必要がありました。たとえ売却しなかったとしても、住居を資産として考えるため、実際に分配される分は住居分を引いた金額で少なかったのです。

ですが、今回の改正により、住居に住む人関係なく住居の評価額も分配されるようになりました。さらに、分配後も配偶者は今まで通りに住居に住み続けられるようになったのです。

これにより、分配資産が足りないからといって住居を売却しなくてすむようになります。また、遺産分配も平均化され、分配金額に差はなくなります。住居を所持しない人にとっては改悪かもしれませんが、住居に住む人とっては、住居を売却する心配がなくなる改善といえるでしょう。

結婚20年以上の場合、家を遺産分配から排除できる

今回の改正で、結婚20年以上の配偶者は、住居が遺産分配の対象から外されるようになります。遺産分配の対象から外れますので、住居を除いた資産が分配されるようになります。配偶者居住権と似ていますが、こちらは無償の贈与になります。そのため、評価額によって資産が減ることはありません。

介護に貢献した親族は金銭請求が可能になる

今回の改正で、介護に貢献した相続人以外の親族も金銭請求が可能になりました。今まではいくら介護や看病をしていても、その頑張りは善意でしかありませんでした。例外として、遺言や親族による話し合いによって渡されることもありますが、基本的には蚊帳の外だったのです。

ですが、今回の改正により、頑張りを金銭請求できるようになりました。相続人でないことで報われなかった人も、金銭請求することで報われるようになったということです。

介護貢献の申請が可能な人は相続人のみ

貢献の申請は親族のみに限ります。たとえ介護を担当していても、家政婦や介護士は対象ではありません。間違えないよう注意しましょう。

法定相続分を超える取得は登記が必要

遺産分配した資産は登記しなければ他の人に説明することができません。つまりは遺産分配で1000万円渡されても、登記しなければ不明金1000万円として扱われてしまいます。場合によっては危ない金額として扱われてしまう可能性もありますので、正しい遺産分配だと証明するためにも登記が必要なのです。

特に、法定相続分を超える取得は登記が必要になります。なぜ法定相続分を超える取得をしたのかを説明できないと、超えた分を不正に取得したと思われてしまいます。なぜ超えたのかを説明するために登記する必要があるのです。

財産目録の自筆免除

元々、財産目録は自筆が基本でした。本人確認のため自筆であるのは当然といえるでしょう。しかし、自筆では字が汚く文字が読めない可能性がありました。また、病気や老化によって文字が書けない人も少なくありません。いざ財産目録を付けようとしても、文字が書けなければ意味をなさなかったのです。

ですが、今回の改正により、パソコンなどによる財産目録が認められるようになりました。これにより、文字も読みやすくなり、代打ちや音声入力によって文字が書けなくても付けられるようになったのです。

法務局で自筆質証書遺言の保管が可能

今まで遺言書は、自分で保管するか弁護士に預かってもらう必要がありました。しかし、自分で保管する場合、保管場所を忘れて紛失してしまったり、遺書を見つけた人に偽造されるなど、トラブルになることも多かったのです。

ですが、法律の改正により法務局でも預かってくれるようになりました。預けておくことにより、遺書の損失や偽造などの心配を減らすことができるようになります。弁護士と法務局。どちらかに預けておけば、安全に遺書を残すことができます。

遺産分配前に換金可能

法律改正により、「遺産分配前に遺産の中から必要経費を引き出せる」ようになりました。本来、分配前の遺産は相続人全員の共有財産となるため、勝手に換金することはできませんでした。ですが、今回の改正により、共有財産であっても引き出せるようになったのです。

これにより、当人の葬式代や遺族の当面の生活費に回すことができるようになり、遺産相続前にお金に悩むことが少なくなったのです。もちろん、換金する際は相続人達の許可が必要です。勝手に換金してしまうとトラブルの原因になりますので注意が必要になります。

今回の改正でどのようになったのか?

今回の改正により、「争い防止」と「手続きが簡略化」されるようになりました。自筆でなくてはならない、自分で保管しなければならないなどの制限がなくなることで、規則による手間がなくなったのです。

特に争いごとが減るのは大きいです。「今住んでいる家を売却するわけにはいかない」「生活を犠牲にして介護をしてきたのに他の人と配分が同じなのは納得がいかない」など、遺産配分の不平不満はとても多いです。それら不平等の不満を、今回の法律で改正したというわけです。

今後も、時代と共に法律は改定されていくと思います。いつ自分が相続トラブルの当事者になるかはわかりません。遺産相続で損をしないためにも、相続法に関心を持ちましょう。