不動産相続後の登記は必須?登記しないことで生じるトラブル事例

不動産相続後の登記は必須?登記しないことで生じるトラブル事例

親族が何らかの理由で亡くなってしまった場合には、死亡届や埋火葬許可申請の提出など、様々な手続きが必要です。その他にも公的手続きなどに追われる中で、不動産の名義変更を忘れていたということもありがちですが、何か問題はあるのでしょうか?

そこで今回は、不動産相続後に名義変更手続きを忘れていた場合のトラブルについて解説していきます。

不動産の相続登記とは

親族の誰かが亡くなってしまい、その亡くなった親族が残した資産の中に土地や家などの不動産が含まれている場合は、その不動産を相続人が相続します。

しかし、自動的に亡くなった被相続人から相続人に対して相続が行われるというわけではありません。生前に被相続人が所有していた不動産は、被相続人名義で登記されているため、その登記の名義を変更する必要があります。これが不動産の相続登記です。

では、親族の死亡などによって不動産の相続が発生した時は、必ず相続登記を行わなければならないのでしょうか?

不動産の相続登記に法的義務はない

相続が発生した場合は、死亡届や埋火葬許可申請、公的手続きなど様々な手続きが必要です。それらの手続きの中には期限が定められているものも多く、手続きが遅れたことによって不利益が生じる場合もあります。

例えば、相続放棄・限定承認の手続きは3か月以内、準確定申告は相続開始後4か月以内、遺留分減殺請求は相続開始と遺留分侵害があったことを知ってから1年間などです。

また、相続税の申告・納税は相続開始後10か月以内、相続税の軽減措置の適用については相続税申告期限後3年以内などのようにそれぞれ期限が決まっています。

しかし、被相続人から相続人に名義を変更するという相続登記の手続きは期限が決まっていません。では、手続きを行わない場合でも特に不利益はないのでしょうか?

相続登記を行わないことによるトラブル事例4選

不動産の相続によって、相続登記を行う必要があるにも関わらず、そのまま放置していると不利益が生じるので注意が必要です。主なトラブル事例は以下の4つです。

  • 不動産を自由に売ることができなくなる
  • 相続人が増え相続関係が複雑になる
  • 相続登記に必要な書類が手に入りにくくなる
  • 担保にして融資を受けることができなくなる

それぞれのトラブルについて詳しく見ていきましょう。

不動産を自由に売ることができなくなる

被相続人から相続人に不動産の相続が行われたとしても、相続登記を行っていない場合は不動産の名義が被相続人のままです。

名義が被相続人になっている状態では、いくら相続で不動産を被相続人から相続人が手に入れているという状態でも、それを証明することができません。他人名義の不動産を勝手に売却するということはいくら親族でもできないため、注意が必要です。

担保にして融資を受けることができなくなる

先ほどと同様、名義が被相続人の状態では、たとえ自分が相続した後に住んでいたとしてもあくまでも他人の不動産ということになります。

そのため、不動産を担保に入れて金融機関から融資を受ける場合でも、他人名義の不動産を担保に入れることはできず、融資を受けることができないので注意が必要です。

相続人が増え相続関係が複雑になる

例えば、夫婦に子供が2人いて、夫が亡くなってしまった場合は、妻と子供2人を合わせた3人が相続人になります。

夫が遺言などを残していない場合には、この3人で遺産分割協議を行うことになりますが、もし、相続登記を行っていない場合には、どうなるのでしょうか?

相続登記を行っていないと、2人の子供の配偶者や子供、さらには孫といった具合に権利が引き継がれていくことになります。

そうなると、遺産分割協議を行うとしても、当事者が多くなって話し合いがまとまりにくくなります。また、遺産分割協議は、相続人全員が集まって話し合わなければならず、時間と手間がかかることになるので注意が必要です。

相続登記に必要な書類が手に入りにくくなる

相続登記を行う場合には、不動産の名義人の戸籍謄本が必要になります。しかし、名義人が結婚などによって氏名が変わっている場合や住所が異なっている場合には、住民票の除票または戸籍の附表が必要になる場合があります。

戸籍謄本の保存期間は150年間なので、あまり問題にはなりませんが、住民票の除票または戸籍の附表は、保存期間が5年間です。そのため、相続登記に必要な書類が手に入りにくくなるので、手続きに時間と手間がかかるので注意が必要です。

チェックリストを作っておくことが重要

親族が亡くなった時は、死亡届や埋火葬許可申請の提出のほか、公的手続きなどもあるなど、様々な手続きを行う必要があるため、余裕がなくなってしまいます。

そのため、期限が定められているものなどは優先的に行うものの、期限が定められていないものについては後回しにして忘れがちなので注意が必要です。

不動産の名義変更を意味する相続登記は、手続きを行っておかないと後で不利益が生じる可能性が高いため、忘れないようにするためにも「相続時のチェックリスト」などを事前に作成しておくようにしましょう。