住宅ローンは、契約者の年収と各金融機関が定める返済負担率に基づいて融資額の上限が決められるため、年収によっては希望額に届かない場合があります。しかし、夫婦の収入を合算することで融資額が増やせるのをご存知でしょうか?
そこで今回は、夫婦収入合算で融資額を増やすための3つの合算方法におけるそれぞれの特徴とメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
返済負担率とは
返済負担率とは「年収に占める年間返済額の割合」のことで、各金融機関が融資額の上限を決める際の基準の1つです。各金融機関で負担率は多少異なりますが、30~35%(住宅金融支援機構HP参照)と言われています。
例えば、年収400万円の人が35年ローンを元利均等返済、金利1.3%、返済負担率30%で融資を受けたとすると、融資金額は3,372万円です。なお、返済負担率35%の場合の融資金額は3,935万円です。
この条件では返済負担率30%の人は120万円、35%の人は140万円を1年に支出するため、手元にはそれぞれ280万円、260万円しか残りません。1ヵ月の生活費が20万円程度しか残らないことを考えると、返済がかなり厳しいものになると言えるでしょう。
そのため、上限は返済負担率30~35%とされていますが、現場では20~25%とされるのが一般的です。そうなると、自身の年収だけでは希望額に足りないという事態も生じるため、マイホームの購入を諦めなければなりません。そこで登場するのが夫婦の収入合算です。
夫婦の収入合算方法は全部で3種類
夫婦の収入合算方法と一口に言っても単純に夫婦の収入を合算すればいいというものではありません。返済義務は誰にあるのか、物件の所有権は誰にあるのかといった違いによって大きく次の3つに分けられます。
- 連帯債務
- 連帯保証
- ペアローン
それぞれの特徴とメリット・デメリットについて見ていきましょう。
連帯債務
連帯債務とは、夫婦の一方を主たる債務者、もう一方を連帯債務者とする契約です。主たる契約者が住宅ローンの契約を行うため契約本数は1本ですが、連帯債務者も同様の契約を結んでいる人として扱われるので無条件に返済義務が生じます。
例えば、夫婦の収入を合算して4,000万円の住宅ローンを契約する際に夫を主たる債務者、妻を連帯債務者とします。連帯債務者である妻が1,000万円の返済を行うと、1,000万円に対して住宅ローン減税が受けられるほか、返済割合に応じて所有権が手に入ります。
しかし、返済途中に万が一の事態が生じた場合に備えて加入しておく団体信用生命保険は、契約の当事者である主たる債務者しか基本的には加入できないため妻は加入できません。そのため、返済を支えてくれた妻に万が一の事態が生じたとしても夫の返済は残ることになるので注意が必要です。
連帯保証
連帯保証とは、夫婦の一方を債務者、もう一方を連帯保証人とする契約です。この場合にも債務者が住宅ローンの契約を行うため契約本数は1本ですが、連帯債務と大きく違うのは、債務者が返済を行わなかった場合のみ連帯保証人に返済義務が生じるという点です。
先ほどのように、夫婦の収入を合算して4,000万円の住宅ローンを契約する際に債務者を夫、連帯保証人を妻とします。夫が2,000万円の返済を行ったものの、夫がそれ以上返済を行わなかった場合は、妻が残りの2,000万円の返済を行うことになります。
連帯債務では、返済した分の住宅ローン減税を受けられるほか、返済割合に応じた所有権が手に入りましたが、連帯保証にはそれがありません。また、連帯債務と同様、団体信用生命保険に連帯保証人は加入できず、負の遺産が引き継がれることになるので注意が必要です。
ペアローン
ペアローンとは、連帯債務に似たような仕組みになっていますが、主たる債務者が2人いる契約です。そのため、個々に契約を行うことになるため契約本数が2本になります。返済も個々の契約内容に基づいて行われます。
例えば、夫の年収を基準に2,000万円、妻の年収を基準に2,000万円の合計4,000万円の住宅ローンを契約します。どちらも住宅ローンを契約しているため、個々の契約に基づいてこの場合では2,000万円に対して住宅ローン減税が受けられるほか、50%ずつの所有権が手に入ります。
また、個々に住宅ローンを契約しているため、団体信用保険も個々にかけられていますが、一方に万が一の事態が生じても、相手の返済分しか免除されず、自分の返済分が残るという点に注意が必要です。
返済負担が大きくなることも忘れない
自身の年収に基づいた融資額ではマイホームの購入が困難な場合でも、夫婦の収入合算で融資額が増え、マイホームの購入が可能になる場合があります。しかし、夫婦の収入合算の3つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあるため注意が必要です。
また、いくら夫婦の収入合算で融資額が増えてマイホームの購入が可能になったとしても、融資額が増えたことで返済負担が大きくなるということを忘れてはなりません。どちらか一方が病気になる、妊娠するなどで就労できず収入が不安定になった場合は、一気に返済が苦しくなります。
夫婦の収入合算を利用して融資額を増やす場合には、万が一の事態も想定しておくようにしましょう。