中古物件を購入する際は、リフォームが必要かどうかチェックする人は多いと思いますが、築年数を細かくチェックしている人はどうでしょうか?実は築年数をチェックするだけでその物件が地震に強い物件かどうか判断できます。
そこで今回は、中古物件を購入する際の注意点として、築年数によって異なる新耐震基準と旧耐震基準について詳しく解説していきます。
地震大国日本
1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)以降、2007の年能登半島地震、新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震と大規模地震が相次いでいます。
日本はこのように大規模地震が発生しやすい地震大国です。平成26年に内閣府が発表した防災白書によると、世界中で発生する震度6以上の地震の約2割が日本で発生していると言われています。
そこで、日本は地震とうまく向き合っていくために、地震に耐えられる家作りの基準として、建物に耐震基準を設けるようになりました。
地震に耐えられる家作りの基準は全部で2つ
どの程度の地震に耐えられる建物かを表している耐震基準は、旧耐震基準と新耐震基準の大きく2つに分けられます。大きな地震に遭遇するたび、日本は地震に耐えられる家作りの基準を見直してきました。
旧耐震基準と新耐震基準はどのような違いがあるのでしょうか?それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
旧耐震基準とは
旧耐震基準とは、関東大震災で甚大な被害が発生した影響を受け、関東大震災の翌年である1924年に「地震に耐えられる建物を作る基準」として世界に先駆けて設けられた基準です。
旧耐震基準の内容は、「震度5程度の中規模の地震が発生しても建物が倒壊しない」というものでした。しかし、1968年に発生した十勝沖地震では旧耐震基準に基づいた建物が建てられていたにも関わらず、鉄筋コンクリート造の建物に甚大な被害が出たため、1971年に鉄筋コンクリート造の建物における柱帯筋の基準が変更されています。
大きな地震が発生するたびに耐震基準の見直しが行われていましたが、1978年に発生した宮城県沖地震では旧耐震基準に基づいた家屋が多く倒壊しました。「旧耐震基準では地震に耐えることができない」という教訓から、耐震基準そのものが見直されるようになりました。
新耐震基準とは
旧耐震基準では、宮城県沖地震の被害を防ぐことができなかったため、耐震基準を根本から見直す必要がありました。そこで、1981年6月1日から新たに設けられたのが新耐震基準です。
旧耐震基準の内容は、「震度5程度の中規模の地震が発生しても建物が倒壊しない」というものでしたが、新耐震基準では「震度6強から7に達するような大規模の地震が発生した場合でも建物が倒壊しない」という内容に変更されています。
旧耐震基準では、震度5程度の地震が発生すると、建物は倒壊しなかったとしても何らかの損傷を受ける可能性があります。しかし、新耐震基準では、震度5程度の地震が発生してもほぼ影響を受けません。
阪神淡路大震災は最大深度7を観測する大規模の地震でした。阪神淡路大震災では、旧耐震基準の建物は30%弱が倒壊などの被害を受けたにも関わらず、新耐震基準の建物は数%の被害で済んだと言われています。
建築確認がいつ行われたかが重要
旧耐震基準と新耐震基準を比べると、現代のように大規模な地震が頻繁に起こる状況では新耐震基準を満たした物件を購入するのが無難と言えます。では、1981年6月1日以降に建てられた物件を購入すれば問題ないのでしょうか?
1981年6月1日以降に建てられた物件でも、新耐震基準を満たしているとは限りません。新耐震基準を満たしているのは、1981年6月1日以降に建築確認を受けている建物です。
新耐震基準を満たしているかは建築確認がいつ行われたかが重要になるため、しっかりとチェックするようにしましょう。
耐震等級をチェックすることも重要
耐震基準とは、建物がどの程度の地震に耐えられるのかという最低限の基準です。そのため、さらに建物の耐震性能が高いかどうかを知りたい場合には、耐震等級をチェックします。
耐震等級には1~3まであります。耐震等級の1は新耐震基準と同程度の建物のことです。耐震等級の2は新耐震基準の1.25倍、耐震等級の3は新耐震基準の1.5倍の地震に耐えることができる建物を指しています。
大規模な地震が発生した際には、耐震等級が高い物件の需要が上がるため、資産価値も高くなります。中古物件を購入する場合は、新耐震基準に該当しているかだけでなく耐震等級も合わせてチェックしましょう。
建物診断(インスペクション)の結果も確認
建物診断(インスペクション)とは、第三者の立場で住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修が必要な個所や時期・費用などについてアドバイスを行うことです。
2018年4月1日から、建物診断(インスペクション)について中古住宅取引の際に説明が義務化されるようになりました。診断が義務化されたわけではありませんが、これによって診断を行った物件かどうか、検査結果がどうだったのかを知ることができます。
診断を行っている物件の方がより安心して取引できるため、これからは建物診断が必須の時代になると言えます。いくら新耐震基準を満たしていて、耐震等級が高い物件でもどこか劣化している場合があります。購入トラブルを防ぐために、診断が実施されていない場合は診断を要求するなど、納得した上で購入するようにしましょう。