核家族化・少子高齢化が進む昨今、親の急逝により相続する実家の相続税に悩む方、多いのではないでしょうか?
公益財団法人生命保険文化センターの公表したデータによると、2016年時点で死亡者約130万人に対し、実際の課税件数は約10万5000件。
つまり、死亡者全体に対して約100人に1人の割合で納税義務が課せられているということになります。
一見して、『相続してもらえる遺産があるなんて羨ましい』と思われるかもしれませんが、相続するものが現在住んでいる持ち家と土地の不動産のみで現金が残っていない場合、相続税の支払いもかなりの負担となることがわかります。
今回は、そんな相続の悩みの種である、相続税を大幅にカットする『家なき子特例』について解説していきます。
参考サイト:公益財団法人生命保険文化センター『相続税を払う人はどれくらいいる?』より
家なき子特例とは?
画像引用元:O-DANより
本来課税対象として相続者である遺族が負担すべき相続税が、80%OFFになるという特例を『家なき子特例』といいます。
この特例を利用できる条件として、以下の項目に該当することが必要となります。
- 同居している遺族の中に亡くなった人の相続人がいないこと
- 遺族に配偶者がいないこと
- 亡くなってから10カ月以内の売却は禁止
- 過去3年以上持ち家に住んだことのない親族が相続すること
国立社会保障・人口問題研究所が公表する『第2回全国家庭動向調査』によると、40代前半までは夫婦いずれかの両親、または両親のうち一方と同居するという居住関係が核家族化の影響から少ない状況であったものが、40代後半からは増加傾向に転じる結果となっています。
引用元:国立社会保障・人口問題研究所『第2回全国家庭動向調査』年齢別親との同・別居割合より
表は、同研究所が公表した『年齢別親との同・別居割合』。
親世代の高齢化に伴い、介護の必要性などから同居に転じる夫婦が増加する年代として40代後半を節目に相続の問題は現実味を増すこととなります。
ただし、今回は親と同居をしている方は対象外の特例となるため、大前提として“親と別居している”ことが条件となります。
上記の表から、40代後半の10組の内7組の夫婦は親と別居しているため、家なき子特例に該当するかどうかについては、いずれ考えていく問題のため今の内に要点を抑えておくことをオススメします。
改正版 家なき子特例との違い
画像引用元:O-DANより
それでは今回の改正で、家なき子特例がどのように変わったのか気になりませんか?
実は、今回の改正により前回の条件を該当させるため、あの手この手で自宅の名義を変更するといった、本来の救済措置のための特例を悪用する結果となったために該当する判定基準が厳格化されることとなったのです。
それが以下の通り。
【改正前】
× 過去3年以上持ち家に住んだことのない親族が相続すること
【改正後】
①亡くなる前(相続開始前)の3年以内に、3親等以内の親族または特別関係のある法人が国内に所有する家屋に居住したことがないこと
②相続開始の時点で、居住用として過去に家屋を所有したことがないこと
となりました。
つまり、持ち家がある場合であっても、今まで親の経営する会社の社宅に住んでいることで別居扱いとなっていたり、夫婦のみが該当要件に入っていたため孫に名義を移していた人が家なき子特例を受けることが出来ないことになったのです。
家なき子特例で相続税の不安をなくしていこう!
画像引用元:O-DANより
改正による厳格化で、親との別居により県外・海外などに住む相続人が、居住を目的としない住居を親から相続したとしても金銭的な負担が少なくなるという本来の形で活用される仕組みが出来上がりました。
今後相続した実家を売却する予定もなく管理していくという方は、特例を生かして相続税の不安を解消できるよう、制度の手続きに関する不明点がある場合には税理士事務所などの専門機関に相談しながら手続きをしていくとより安心ですね。