不動産の買い替えでは、売却代金を次の購入資金の一部に充てるためにも速やかに売買を成立させたい人も多いのではないでしょうか?しかし、現在は住宅が飽和状態であるため売買が成立しづらくなっています。
そこで今回は、速やかに売買を成立させるための1つの方法として建物診断を行っておくメリットについて詳しく解説していきます。
空き家問題は深刻化しつつある
平成28年に厚生労働省が公表した白書では、1900年に4,000万人だった人口も1967年に1億人を突破した後は2015年の1億2,711万人をピークに減少しています。このペースでいくと、2050年には1億人、2100年には5,000万人を割り込むと予想されています。
5年に1回集計される住宅・土地統計調査の平成25年版を見ると、人口の増加にあわせて空き家率も低下しているのかというと全くそうではありません。総住宅数の増加に伴って空き家率も高くなっており、平成25年度の調査では13.5%と過去最高を更新しました。
平成30年の調査結果はまだ公表されていませんが、総住宅数が増加しているにも関わらず人口は減少しているため、今後は空き家の増加が目立つなど、中古住宅の売買が厳しくなることが予想されるでしょう。
売買が成立しにくいことによる影響とは
転勤や家族構成の変化を理由に、買い替えを検討している人の中には、旧居を売却してから新居を購入するという人もいれば、新居を購入してから旧居を売却するという人もいます。
旧居を売却してから新居を購入する場合には、旧居の売却代金を新居の購入費用の一部に充てて住宅ローンの融資額を減らすことができます。しかし、売買が成立するのが遅れれば遅れるほど新居の購入が遅れるため、売買が成立しにくいのは大きなデメリットです。
新居を購入してから旧居を売却する場合でも、まだ住宅ローンを完済していない場合には、新居の住宅ローンの返済と売りに出している旧居の住宅ローンの返済が二重になるなど、返済負担が大きくなるのがデメリットと言えるでしょう。ではどうすれば、速やかに売買を成立させることができるのでしょうか?
売却物件に建物診断(インスペクション)を行う
建物診断(インスペクション)とは、第三者が住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修が必要な場所や時期・費用などについてアドバイスを行うことです。
2018年4月1日より中古住宅の売買は、建物診断(インスペクション)が行われた物件かどうか説明することが義務化されました。診断をするかどうかは義務化されていないため、中古住宅の売主に建物診断を行うかどうかは判断が委ねられます。
アメリカなどでは、中古住宅の流通が高いことため建物診断が行われるのが一般的ですが、日本では、住居購入=新築という認識が強いため、まだまだ建物診断が根付いていません。
根付いていないからこそ、市場に数多く溢れている中古住宅の中で建物診断を行っている物件が際立つことになります。「建物診断を実施済の物件」という付加価値を付けることで速やかな売買が期待できるでしょう。
建物診断の費用はいくらくらいか
建物診断に興味を持ったものの、いくらくらいの費用がかかるのか気になった人も多いのではないでしょうか?建物診断は、診断を依頼する業者や診断内容によって費用が大きく異なるため、一部をご紹介したいと思います。
一般社団法人建築診断協会が公表している料金を参考にすると、自己居住住宅の経年劣化診断および木造住宅の耐震診断の最低料金は、1棟150,000万円からと記載されています。
簡易な建物診断であれば数万円から行うことができるため、売却を依頼する不動産業者に相談してみるのも良いと言えるでしょう。
建物診断で行う診断内容とは
経年劣化診断とは、どのような診断を行うのでしょうか?経年劣化診断で行う主な診断は以下の通りです。
- 構造上の問題がないか
- 仕上げ材の浮、割れがないか
- 防水の寿命があるか
- 隠れた瑕疵がないか
耐震診断では、物件の現状で、どのくらいの地震に耐えることができるのかを診断します。中古住宅は、費用を安く抑えられるものの、日本では新築物件よりもリスクが高いと感じている購入者が多いと言えます。
そのため、費用はかかるものの、建物診断を行うということは中古物件を購入するリスクの低さを証明することになるので、購入希望者も興味を持ちやすくなると言えるでしょう。
建物診断はいずれ当たり前になってくる
日本では、中古住宅の売買を行うにあたり、建物診断を行っているかどうか説明することが2018年4月1日に義務化されてからまだ1年も経過していません。そのため、建物診断の認識が低いので、今は中古住宅の売却を検討している人にとってチャンスと言えます。
建物診断を行うことによるメリットが普及するほか、国が建物診断の実施を義務化に踏み切ると、他の中古住宅も一斉に建物診断を行うようになります。そうなると、「建物診断を実施済み」という付加価値が当たり前になるため、結果的に元の需給状態に戻ってしまうと言えるでしょう。
太陽光パネルが登場した時のように、普及していないことで初期投資が大きくなる場合がありますが、「この中古物件は建物診断実施済だから安心だね」と先行者利益が期待できる可能性があります。不動産業者が建物診断を行っている業者のネットワークを持っている場合もあるので、まずは相談することから始めてみましょう。