2019年の税制改正でどう変わる?空き家の売却に関する税制の変更点とは

2019年の税制改正でどう変わる?空き家の売却に関する税制の変更点とは


消費税の増税による影響の大きい不動産市場は、消費税が8%から10%に増税されるのに合わせて、住まい給付金の拡充、贈与税の非課税枠の大幅な拡充が既に決まっているほか、2019年の税制改正大綱には住宅ローン控除の延長が盛り込まれています。他にどのような内容が税制改正大綱に盛り込まれているのでしょうか?

そこで今回は、2019年の税制改正で、不動産に関するどのような変更が予定されているか詳しく解説していきます。

税制改正とは


税制改正とは、現在制定されている税制を時代の流れに合わせて順次見直しを行っていくことです。日本では1年に1回税制改正を行っています。

おおよその税制改正の流れについて説明すると、前年度の夏頃までに各関係省庁から税制改正要望が提出されて12月頃までに与党から税制改正大綱が発表されます。そして、2月頃に税制改正法案が国会に提出されて審議や採択を経て4月に施行されるのが一般的です。

そのため、記事を書いている2019年の1月時点では、まだ税制改正大綱の段階であるので、実際に採択されるかどうかは未定です。しかし、2019年は消費税の増税が控えているため、どのような改正内容が2019年の税制改正大綱に盛り込まれているのかあらかじめ把握しておくことが重要と言えるでしょう。

3,000万円の特別控除の適用範囲拡大


不動産市場は取引額が大きいため、消費税増税の影響を大きく受けてしまいます。そのため、今回の2019年の税制改正大綱には、増税後の買い控えが起きないようにどのような内容を盛り込んでいるかが注目されていました。

しかし、前回の増税時と比較して大きく変わったのは、住宅ローン減税の適用期間が現行の10年から3年延長されて13年になるという程度でした。

その一方で、増税との関連性は薄いものの、3,000万円の特別控除の適用範囲の拡大が注目されています。3,000万円の特別控除とはどんなものか、どのような変更が税制改正大綱に盛り込まれているのか詳しく見ていきましょう。

3,000万円の特別控除とは

3,000万円の特別控除とは、不動産の売却によって利益が生じた場合でも、3,000万円まで控除を受けることができるというものです。

不動産の売却によって譲渡所得が発生した場合には、所得税が課税されます。不動産の譲渡所得は、売却代金から取得に要した費用や仲介手数料などを差し引いて求めます。

基本的に不動産の価格は、築年数の経過とともに下がっていくため、売却代金が課税対象となることはほとんどありません。しかし、再開発や需要の上昇などによって不動産の価値が上昇すると、課税対象となるため売却しづらくなり、不動産の流動性が低下します。

そこで、不動産取引の流動性を高める目的で、3,000万円の特別控除が導入されましたが、この控除を受けるには、「自身が居住の用に供していること」「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する」などの条件があります。

居住期間の長短に関係なく控除を受けることができるという点がメリットですが、相続で取得したものの住んでいない不動産である場合には適用できないという点がデメリットと言えるでしょう。

空き家に対しても適用できるように変更

相続で取得した不動産を居住の用に供していなければ、売却しても売却代金に対して課税されるため損をすることになります。

その結果、売却せずに空き家として放置する人が増えましたが、空き家のほとんどが危険な耐震性の低いものであることが多く、政府としては地震などの被害を拡大させないように空き家を整理する必要がありました。

2016年の税制改正では、上記のような課題を踏まえて、相続で取得した空き家を譲渡した場合でも3,000万円の特別控除が適用できるようにしました。それが空き家に係わる譲渡所得3,000万円特別控除です。

この特別控除では、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに被相続人が居住の用に供していた不動産を売却する場合でも、3,000万円の特別控除を適用できます。

特別控除の適用範囲が変更されたことによって、空き家を減らすことができるだけでなく、空き家を抱えて困っていた人も売却しやすくなったと言えるでしょう。

期間延長に加え条件をさらに緩和

2019年の税制改正大綱では、空き家に係わる譲渡所得3,000万円特別控除を受けることができる期間の延長に加え、適用条件の緩和が盛り込まれています。

この特別控除は、空き家を減らすことが目的であったため、2019年12月31日までの期間限定となっていました。税制改正大綱では、適用期間を4年延長して、2023年12月31日までの期間とすることを盛り込んでいます。

また、被相続人が亡くなる際には、自身の家ではなく病院や老人ホームなどにいるケースが多いという現状があります。税制改正大綱では、これらを踏まえて、被相続人が病院や老人ホームにいるケースも控除の適用対象とすることを盛り込んでいます。

税制改正大綱であるため確定ではありませんが、確定することによって空き家の流動性がより高くなることが期待できるでしょう。

市場に好条件の不動産が出回る可能性が高くなる


この税制改正大綱が確定すると、今まで放置されていた空き家の流動性が高まる可能性があります。その結果、市場に好条件の物件が出回る可能性も高くなると言えます。

不動産の購入を検討している人は、税制改正がどのようになるのかを見守りつつ、並行して不動産購入に向けた準備を進めるなど、いち早く好条件の物件を契約できる体制を整えておきましょう。

また、不動産の売却を検討している人は、改正が適用になったとしても、期限があることを忘れてはいけません。高く不動産を売却しようとこだわり過ぎて、気づいたら期限を過ぎていたということがないように注意しましょう。