失敗しない老後の住まいの住み替え。戸建から都心マンションへ

失敗しない老後の住まいの住み替え。戸建から都心マンションへ

近年、戸建から利便性の高い都心マンションへ住み替えをする人が増えています。国土交通省発表の住宅市場動向をみても、住宅を二次取得したおよそ半数が50歳代以上で、マンションを購入した平均年齢は58歳前後となっています。

この調査結果からも、住み替え目的でマンションを選ぶシニア層が増えていることがわかります。そんな「都心回帰」の今、失敗しない老後における戸建から都心のマンションへの住み替えをテーマに考えてみたいと思います。

売却額と取得費用をざっくり把握しよう


戸建から都心マンションへ住み替えを成功させるいちばんのポイントは、「収支」がプラスになるかどうかを、しっかり把握することです。収支がプラスかどうかを知るために、最初にやるべきことは、自宅がどのくらいで売却できるかを調べましょう。

売却した金額で新しいマンションが購入できるのなら申し分ありません。しかし、多くの場合、売却した金額よりも都心マンションの購入費用が高くなると思われます。というのも、郊外の戸建のニーズはそれほど高くなく、一方の新居となる都心マンションはバリアフリーなどの老後生活に配慮された住環境が望ましいこともあり、必然的に付加価値の高い物件になるからです。

例えば、今住んでいる戸建を3,000万円で売却したとします。新しいマンションを4,000万円で取得した場合、その差は1,000万円。

この1,000万円が住み替え費用となるわけです。一時的とはいえ、資金の持ち出しになるのですから、無理なく資金が出せるかどうか検討します。いざというときのための蓄えまでをつぎ込んでしまうと、いわゆる“老後破産”になってしまうので、これだけは絶対に避けなければいけません。

ダウンサイジングによる支出削減を把握する


無理のない資金繰りと判断できた場合、次は支出について比較します。ほとんどの場合、戸建からマンションにダウンサイジングするのですから、支出は減るはずです。主な費用について細かくみてみしょう。

都心マンションは交通の便がよくなることから、移動手段を自家用車から公共交通機関に変更します。これにより自動車の維持費が不要になります。公共交通機関にはシニア向けの割引制度を設けていることが多く、これを活用することで、かなりの削減が期待できます。

火災保険、家財保険も居住スペースが減少した分、割安になるでしょう。居住スペースが減少するという視点でいえば、固定資産税や水道光熱費の削減も期待できます。10年スパンで100万円規模の出費となる屋根や外壁のメンテナンス費用もマンションでは不要になります。

一方、新たに増える支出は、共益費です。これはマンションによって金額がさまざまですので購入時にチェックしたい費用です。
このように項目ごと、節約できる費用をできるだけ細かく把握します。

仮に、戸建では維持費等も含め月30万円の生活費だった場合、マンションでは月15万円までに削減できたとしたら、年間180万円のコストダウンになります。1年で180万円、2年で360万円……、6年で1,080万円です。マンションを取得するため必要な費用が1,000万円だった場合、6年後に分岐点を超える計算になります。

この削減額の積み重ねがいつ取得費用を超えるかということも、住み替えのためには重要な要素です。分岐点が長くなる場合は、取得するマンションを別にするなどの見直しが必要です。

住み替えが難しい場合は賃貸を検討

住み替えが難しい場合は、賃貸を検討する方法もあります。今の戸建を貸して、自分たちは都心のマンションに住むのです。

家賃収入でマンションの賃貸費用を賄うことができればベストですが、現実的には、4LDKの戸建であれば、月10万円の家賃収入で、マンションの家賃が月14万円程度というように、支出増になるでしょう。この例では、毎月4万円の支出増ですが、前章で挙げた生活費の削減によりカバーできれば、賃貸で住み替えは成功といえます。

まとめると住み替えの成否は、一時的には支出が増えることになりますが、無駄の削減や生活費の節約により収支を改善することがポイントです。自宅が想定よりも安い売却額にしかならない、ダウンサイジングしてもあまり節約にならない場合は、メリットを享受することができません。
手持ち資金が少ない場合も大きなリスクを伴います。失敗しないためには、売却や取得費用の正確な見積り、生活費の把握、老後の生活設計など、事前にしっかりとしたシミュレーションをすることがとても重要です。